霧原一輝/日記

日記

■2007年12月31日(月)  二枚でどうだ!
 Ryuの日記

 我輩は犬である。どこかの猫と違って名前はある。Ryuという名前だ。
 世間は大晦日を迎えて、なんだか猥雑な雰囲気さえただわよせている。が、我輩には、
(そんなの関係ねえ!)
 お年玉をもらえるわけでもないし、モチを御馳走になれるわけでもない。
 だいたいあんな白くて粘る食べ物を口にしたら、我輩の喉が詰まってしまう。犬がモチを喉に詰まらせて絶命なんて、洒落にもならない。
 うちのご主人様はと言うと、さっきまでTBSで「イカ天 復活祭」という番組を見ながら、「やっぱ、すげえよ」と、泣いたり笑ったりしていた。どうやら感傷にふけっていたらしい。
 挙げ句の果てには我輩に向かって「二枚でどうだ!」と叫んで笑いだす始末。
「ゴン太のササミジャーキー」を二枚くれるのかと思ったが、そうでもなさそうだ。何のことやらさっぱりわからない。
 やつはこの暮れだというのに、相変わらずだらだらと書いている。
 もう少しメリハリを利かせて、書くときは書いて、休むときは休んだらどうかと言いたくなる。だが、やつに言わせると、
(走るのをやめると、今度、また走りだすのにえらくエネルギーを使う。だから、俺は今ペースを落としてジョギングしているのだ。正月だって、書くんだから)
 物は言いようだ。仕事を休むと、同居人に大掃除とかを言いつけられるので、仕事をするふりをしているのだろうと我輩は踏んでいる。
 我輩が今年日記を書くのもこれが最後だろうから、「2007年 我が家の5大ニュース!」

1、ご主人様がWEBページを開く。やつの怠惰のせいで、我輩も日記を書くはめに。やつはこの前、妙齢の女性に「Ryuちゃんの写真、見たわよ。あんな顔してたのね。かわいいじゃない」と言われて、我輩に嫉妬の炎を燃やしていた。
2、我輩が誤って、ご主人様の太腿を齧る。離れ犬に勇猛果敢に立ち向かっていったとき、やつが足を出すので、思わずガブリと。相当痛かったらしくて、涙浮かべてた。やつの太腿にはいまだに我輩の牙の跡がはっきりと残っている。
3、我輩の子を取ることが決まる。近くのブリーダーの河内さんにやつが約束したものの、いまだに見合いの話は来ない。どうなってるんだ?
4、我が家のペンキを塗り替え、壊れた風呂のボイラーを取り替える。デッキが取り払われて我輩の日向ぼっこの場所がなくなったのが残念だ。我が家もそろそろガタがきてて、リフォームの時期がやってきたようだ。
5、やつが書庫に溜まっていた膨大な本を遺棄する。その量、なんと3トン。無料の焼却場に持っていって計ったら3トンあったとか。近くの「ブックオフ」にでも売れば良かったのに、やつは本の価値を認めない「ブックオフ」が大嫌いなので、焼却されるはめに。3トンだぞ。作家と出版社に謝れ!

 ひどいものだ。結局、ニュースらしいニュースはなかったということだ。いいのか、悪いのか・・。
 というわけで、いよいよ大晦日だ。近くの寺で突かれる鐘の音が鳴り響くと、我輩はついつい寒空に向かって遠吠えしてしまう。柴犬の「シロ」ちゃんは、我輩の遠吠えが物悲しくて、女心をそそられるというのだが。
(皆様、良いお年をお迎えください、ワン! ワン、ワオーン!)

 ご主人様の言葉
 このWEBの制作、管理をしてもらっている大学生の井伊茉莉花さん。
(就職内定、おめでとうございます)
 東京の少数精鋭のITベンチャーらしいですね。カッコいいす。
 厳しいご時世ではありますが、若さで乗り切ってください。
(もちろん、このWEBの管理、続けてもらえるんですよね?)

 今年は仕事面で充実した日々を過ごさせてもらいました。これも、霧原を応援してくださっている出版社の皆様、そして読者の皆様のおかげです。
(ありがとうございました)
 来年もまた、忙しくて目がまわるくらいの日々が過ごせたらと、マゾヒスティックに思っています。
(皆様、霧原を下僕としてこき使ってくださいませ)
 では、良いお年をお迎えください。


■2007年12月23日(日)  伝説の・・・
 或る雑誌社の忘年会に出た。
 毎年顔を合わせるのは、このときだけという人がけっこういるから、忘年会も馬鹿にならない。
 イラストレーターの徳野雅人さん、かなりのお歳のはずだけど相変わらずダンディだ。
 早乙女宏美ちゃんは歳とって、ますます色っぽくなった。
 徒然なる感傷にひたりながらスキヤキの牛肉をつついていると、離れたところに、初めて見る顔が。変わった眼鏡をかけて、やさしげに談笑している男性は、誰だ? なぜか気になる。編集者に聞くと、「ああ、由紀かほるさんですよ」と言う。ガーンと来た。
(あれが、あの人が、伝説の由紀かほるか!)
 昔、SM小説読んでた頃、千草忠夫と由紀かほるが愛読書だった。
 若いとは聞いていたけど、ほんとうに若い。どう見ても、四十後半だ。
(おかしいな。由紀さん、小樽にいるはずじゃ?)
 ミーハー化して、ビール瓶持って走ったね。名刺交換して、話し込んだ。
 取っつきにくいところがあると聞いてたけど、実際は気さくだった。この人が、あのスケールの大きいSMハードロマンを書いているとは、ちょっと想像しがたい。
 いろいろ聞くと、昨年、小樽から東京の実家に戻ってきたらしい。
「手書き原稿」は業界でも有名だったが、今はパソコンを使って、メールもちゃんとするという。
 小説の話もしたが、ここでは省く。
 雑誌の忘年会が終わったあと、小生はふたつの編集プロダクションと個人的な忘年会をすることになっていた。一度にしないと、度々上京するのは大変だからね。
 舞い上がってたんだな。由紀さんがその編プロで仕事をしたことはあるけど会ったことはないというので、由紀さんを無理やり、連れていっちゃったもの。
 編プロの人は喜んでくれたみたいだけど。
 それにしても、由紀さんって、私より年下なんだな。若い頃から書いてたからだろうけど、ほんと驚く。
(鬼才、天才だね、やっぱり)
 ばんばん書いてほしい。切にそう思う。


■2007年12月17日(月)  ようやく・・・
 Ryuの日記 ・5

 我輩は犬である。どこかの猫と違って名前はある。Ryuという名前だ。
(しばらく日記を書けなくて、ゴメンなさい、ワン!)
 これもご主人様がいけないのだ。
 我輩は一メートルほどジャンプして、やつが高く掲げた「ゴン太のササミジャーキー」を奪い取るのが得意技のひとつなのだが、この前、着地した瞬間、前足にいやな感触が走った。見ると、ふっくらとした肉球から赤いものが。
 庭に落ちていた古クギが我輩の肉球に突き刺さったのだ。
 やつはすぐに主治医の「S動物病院」に連れていってくれたので、大事には至らなかったが、おかげで我輩は以後つらい生活を余儀なくされた。
 我輩のような思春期の犬族にとって、散歩に出られないというのは、死ぬと言われたようなものなのだ。もちろん、キーボードも打てなかった。
 せめてその間くらい、主人が日記を書いて我輩の怪我をカバーしてくれればいいのに、やつは「忙しい、忙しい」の連発。まったく、困ったものだ。
 とはいえ、この前、やつは我輩の頭を撫でながらしみじみ言った。
(俺はゴールめがけて、直線で自分に鞭をくれていた。だが、それは間違っていることに気づいた。ゴールなんか、ないのだ)
 そこで、やつは三文小説の主人公のように窓から外を見て、どこか遠くを見るような目をした。
(いや、ゴールはどこかにあるのだろうが、それははるかに先の見えないところにある。したがって、これはマラソンなのだ。周囲の景色を愉しみながら、俺は市民ランナーのようにゆっくりと走る。つまり、走ること自体を愉しまなくては、ろくな仕事もできない。ようやく、そのことに気づいたよ)
 うちの主人がこんなにマジな顔をするのは、一年に一回あるかないかだ。
 賛同を得たいのだろうと思って、我輩が「ワン!」と応じると、やつは、
(そうか、そうか。お前にもわかるか。真実というのは、ヒトの世界でも犬の世界でも同じなんだな)
 その自己陶酔的な顔に寒けが走ったが、ここは一応やつを立てておいた。なんだかんだと言っても、やつは我輩のご主人様なのだから。
「よしよし、いい子だ」とやつは上機嫌で、「ゴン太のササミジャーキー」をご褒美で2ピースもくれた。
(ふふっ、相変わらず甘い男だ)
 我輩は涎を垂らしながら、固いジャーキーを齧った。

 主人の言葉
 年末進行のハードなスケジュールをなんとかして乗り切ったので、今後日記もどんどん更新できると思います。
 近いところでは、今月出る「小説NON」(祥伝社)に四十枚の短編が掲載されます。
 1月頭には書き下ろし長編『初春の天使』(双葉文庫)が刊行されます。
 また1月に出る「特選小説 三月号」(綜合図書)にも五十枚の短編が載ります。
 気が向いたら、手にとってくださいね。

(だそうだ。不肖の主人だけど、よろしくね、ワン、ワン、ワン!)


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