霧原一輝/日記

日記

■2007年09月18日(火)  「脱がして」でもいいんじゃないか?
 今日の日記に早速、年上の編集者から反論があった。
「霧原は、『脱がす』を下二段活用だというけど、あれは「脱がさない」という未然形をとるわけだから、5段活用じゃないか。それなら、連用形で『脱がします』となって、『脱がして』は成立するだろう」
 なるほど。「脱がす」の「す」は語源的には「せる」の古語なわけで、下二段なのだが、「脱がす」を自立した他動詞と考えれば、たしかに脱がさない、脱がします、脱がすとき・・と5段活用をするという気もする。
 日本語検定の付録には、「五段活用の動詞の場合、『読ます』『書かす』のように、(す、をつけて・筆者注)使役の意味を持つ動詞を作ることがあるが、俗語的であり、適切な形とは言いがたい。(ただし、『飛ばす』『転ばす』など、他動詞として適切な形もある。)」
 と、記してある。この使役の意味を持つ他動詞の活用形はどうなのだろう?
「飛ばす」は辞書にも、5段活用と載っている。
「読ます」はそれ自体では載っていなくて、「読ませる」で「読むようにしむける」という意味で「下一段活用」とある。
 では「脱がす」の場合は? 「脱がせる」も「脱がす」も辞書に載ってないんだな。「脱ぐ」はあるけど。
 常識的に考えて、「服を脱がさないで、セックスする」か「服を脱がせないで、セックスする」か?
 どっちでもいいように思える。どちらかというと、「脱がさないで」が優勢か。
 これは、たぶん、「脱がす」の活用形だからだ。
 編集者はこう言った。「(男が女の)『服を脱がす』と、『服を脱がせる』って、微妙に違わないか? 脱がすの場合、完全に男が行為をしている。それに対して、『服を脱がせる』って、男が命令して、女が自ら服を脱ぐというケースも考えられないか?」
 そ、そうか。使役形というのは、基本的には相手に行為をさせる形だ。「読ませる」の場合、読むのは相手だ。
 それで行くと、「脱がせる」の場合、実際に脱ぐのは女ということになる。だが、「脱がす」の場合、行為主体は男性だ。
「脱がせる」と「脱がす」って、じつは違うということか?
 地の文で「女の服を脱がして」というのは、成立する。使役形じゃないし。
 しかし、女性が「脱がせて」と言った場合、服を剥くのは男性なわけで、となると、これは相手にそうしむけるわけで、これは「使役形」である。
 だったら、これは「脱がす」の活用形ではなくて、「脱がせる」の活用形ということになるから、やはり、「脱がせて」が正しいんじゃないか。
 なんとなく、頭のなかがすっきりした気がする。
「服を脱がして」は「服を脱がす」の活用形で、地の文としては成立する。むしろ、「服を脱がせて」よりも正しい。
 だけど、女の人が「脱がせて」という場合、これは使役形であり、「服を脱がして」というのは、正しくない。
 一応、そういう結論に達したのだけれど、どうなんだろう?
 意見、求む。
 それにしても、女性の依頼形で使役形の言葉、「入れて」「抱いて」「イカせて」「脱がせて」って、なんか男性のお下劣な気持ちを誘います。


■2007年09月18日(火)  「脱がせて」か「脱がして」か?
「日本語検定 公式3級」の過去問をやったら、93点だった。
 つまり、百の設問のうち7つは間違えたわけだ。
 たとえば「もう少し料理を食べてはいかがですか」という文章の、食べてはの部分を敬語にする際、どうしても「召し上がられては」に○を打ってしまう。だが、「召し上がっては」が正解なのだ。「召し上がられては」を二重敬語と言って、芳しくないらしい。
 ほんとうに、日本語は難しい。
 以前から書いてて、疑問符が点滅したままの言葉づかいがある。
 女性が男性に言う。「服を脱がせて」あるいは、「イカせて」
 だけど、「服を脱がして」でも、「イカして」でもいいようにも思える。
 日本語検定の付録に、「動詞の使役の形の作り方」というのがある。基本的に助動詞の「せる」を付ければいい。
「脱ぐ」は5段活用で、この未然形の「脱が」ないに、「せる」を付けると、使役形ができる。
(なんか、この「使役形」って昂奮する!)
「せる」は下一段活用だから、せ、せ、せる、せる、せれ、せよとなり、ての連用形だから、「脱がせる」が正しい。
 だけど、これは男のほうから考えた場合の「使役形」だ。女性は受け身になってしかも、「こうして欲しい」と願うわけで、これも使役なのか?
 受け身でありながら、相手にこうしろと言ってるわけだから、やはり、「使役」と考えてよさそうだ。
 しかし、「脱がして」でもいいようにも思える。個人的には女性が言う場合「脱がして」のほうが、柔らかい気がする。たぶん「せ」と「し」の語感の違いで、「せ」よりも「し」のほうがとんがってない気がするからだ。
 へんだなと思っていたら、5段活用の動詞の場合、「読ます」「書かす」のように、「す」をつけて使役の意味を持たせるケースがあるという。なるほど、「脱がす」だって、おかしくない。活用形に「し」があれば。
 辞書で調べると「す」は「せる」の古語らしい。そして、「す」は、せ、せ、す、する、すれ、せよという活用を持つ。
(なんだ、「し」は出てこないじゃないか)
 やっぱり、「脱がして」は間違ってるってことか。地の文章で「脱がして」とつかうのも正しくないってことだ。

(待てよ。よく女性が男にセックスをせがむ際に「・・して」と言うじゃないか!)
 あの「して」は何なんだ?
 たぶん、「する」というサ変動詞の連用形だ。「し、し、する、する、すれ、せよ」。
「セックスする」が「セックスして」となりさらに省かれて「・・して」になる。
「セックスさせて」となると、これはどうなんだ? これは完全な使役形で、男もよくつかう。
 たぶん、この「する」が「せる・させる」と混合して、頭のなかで「脱がして」になってしまったんだろう。
 じつに女性の言葉は、悩ましい。あまり、深く考えないようにしよう。
(勃つものも勃たなくなる!)


■2007年09月08日(土)  作家の日常 1 by Ryu
 我輩は犬である。どこかの猫とは違って、名前はある。Ryuという名前だ。
(昨日の台風はすごかったな)
 台風一過の青空を眺めて、縁側で気持ち良くひなたぼっこをいると、
「おい、なにをサボってるんだ。もう、三日もブログを書いてないじゃないか」
 ご主人様の声が上から降ってきた。
(そんなこと言っても、あんた、この三日間、ろくに外出もしないで、ただ書いてただけじゃないか。どうやって、書くんだよ)
 切れ長の目で(我輩はとくに目尻の切れあがり方がセクシーだと、牝犬から言われる)訴えかけると、主人が、
「わかってないな、お前は。ブログってのは、細々とした日常を書くのがいいらしいぞ」
 どういうわけか、やつは我輩の心の声を読み取ることができるのだ。
 ご主人様に引き立てられて、我輩はパーソナルコンピューターの前に座った。
 たしか、日常を書けと言ってたな・・。
 やつが起きてくるのは、だいたい正午前。世間の人は汗水垂らして働いている頃だというのに、まったくけしからんやつだ。
 リビングでテレビのスイッチを入れ、ソファに寝ころがって、新聞を読む。二紙取っているのだが、読むのはスポーツ新聞のほうだ。
 まずは一面を見て、「なんだ、この一面は。昨日のスポーツにも優先順位というものがあるだろう。価値観がないのか」
 ぶつくさ言いながらも、細かいところまで熟読し、ようやく一般紙に移る。
 その頃にはテレビで「笑っていいとも」が始まり、やつはタモリを見ながら、新聞にざっと目を通す。その間に、我輩の頭や喉のあたりを撫でてくれるのだが、やり方はいかにもいい加減だ。
 しばらくすると、空腹を感じるのか、キッチンに立って料理を作りはじめる。
 連れ合いはいるのだが、昼間は働きに出ているので、昼飯を作ってくれる人がいないのだ。我輩もただ眺めているわけではなく、ご主人様のために収納庫からジャガイモやニンジンを運んでくる。
 やつが作るのは、だいたいがフライパンを使った炒め物で、メタボの原因になっているのだが、「低カロリーの健康オイルを使っているから、問題ない」といっこうに気にかける気配はない。
 出来上がった肉野菜炒め系の料理を美味しそうに食べるご主人様の横で、「くうーン」と鳴くと、「そうか、お前も腹が空いたか」と席を立って、例の「ゴン太のササミジャーキー」を二切れほど持ってきてくれる。
 こういうところだけは、やさしいのだ。
 だが、それからが、最低だ。
 ご主人様は満腹になると、ソファでうとうとしはじめる。
 だいたい、朝方の六時くらいまで仕事をしているので、やむを得ないと言えばそれまでだが、しかし、さっき起きたばかりなのに、また昼寝というのはいかがなものか。これでは、ドラキュラ伯爵と同じだ。
 やつは自分のことを「不眠症だ」と嘆いている。
 我輩が思うに、寝る直前まで仕事をしているので、頭が冴えてしまってすぐには眠れないのだ。当たり前である。
 寝酒でもすればいいのに、その時間を惜しむから、ベッドに入っても輾転としている。
 まったく、要領が悪いとしか言いようがない。
 しばらくして、昼寝から起きたご主人様は・・。
 長くなりそうだ。あとは次回ということにしよう。
(ワン!)


■2007年09月04日(火)  我輩は犬である 壱
 我輩は犬である。どこかの猫とは違って、名前はある。Ryuという立派な名前だ。
 これは今のご主人様が付けたのではない。生まれて数カ月の間、我輩が飼われていた家の主が大の将棋好きで、我輩に期待して「竜王」と名付けたのだ。
 我輩の由緒ある血統書には、「竜王」の名前がさん然と輝いている。
 それを今のご主人様が(実像はこう呼ぶのがはばかられるほどに権威のない男なのだが、機嫌を損ねるといけないので、一応、こう呼んでおくことにする)、「こいつは『王』という柄ではないから、『Ryu』だけでいいだろう」と勝手に改ざんし、以後、ひどくPOPな名前で呼ばれることになった。
 言っておくが、我輩は血統書付きの、柴犬の名犬である。
 父親は四国・愛媛の宇和島で「この柴犬あり」と謳われた名犬である。その父親が種付け出張で関東を訪れたときに、信州産まれの母親とエッチしてできたのが、小生なのである。
 我輩のことはまたあとで語るとして、早速本題に入ろう。
 ひと月ほど前だったろうか、昼の酷暑が残るなか、小生はご主人様に連れられて、家の周りを散歩していた。
 うちの「旦那」は、スケベな小説を書いてお金を貰うという、極めて特殊な仕事をしている。官能作家というらしいが、我輩が見るかぎりでは、のんべりだらりとした生活に終始していて、やつが真面目に仕事をしているところを見たことがない。
 したがって、我輩を散歩に連れ出す時間は、有り余っている。
 その夕方も、我輩は照り返しのきつい道路をハァハァ舌を出して歩きつつ、お気に入りの牝のプードル「スザンヌ」がまき散らしたオシッコの匂いを恍惚として嗅ぎながら、ところどころにオシッコの匂い付けをして、入道雲がむくむくと湧きあがり、今にも夕立のきそうななかを、ご主人様の顔色をうかがいつつ歩いていた。
 おおかたまた小説に行き詰まっているのだろう、やつは眉間に皺を寄せて、数メートル前の道路を難しそうな顔で見つめている。
 そのとき、我輩は見たのだ。
 やつの横顔がニヤッと薄気味悪くゆがんだのを。これでも、微笑んでいるのだ。
(オッ、なにかいいアイデアが浮かんだのだな)
 ご主人様は、散歩の途中でこれだという考えが浮かぶと、気味悪く笑うのだ。ひどいときは、ひとりで声をあげて「怪人二十面相」のように笑ったりする。
 そのときは、さすがに声をあげることはしなかったが、やつは何を思ったのか、我輩を見て、いやらしく口角を吊りあげたのだ。
(な、なんだ!・・)
 ヒイた感じになっていると、やつは、
「うん、じつにいい。お前に書かせればいいんだ。我ながら、グッドアイデア」
 謎のような言葉を吐いた。
 まさか、それがこのような顛末になるとは、さすがの我輩も予想できなかった。
 
 その日から、我輩のキーボート打ちの特訓がはじまった。
 いやだというのに、ご主人様は我輩をパーソナルコンピューターの前に座らせて、文字を打つことを強制したのだ。
「わかってるな。もう少ししたら、おれはWEBサイトを起ちあげる。その際、どうも日記を書かなくてはいけないらしいが、おれは知ってのとおりで多忙を極めている。お前はいつもおれの周りにいるから、おれのことは誰よりもよく知っているはずだ。本人よりも知ってるかもしれない。したがって、お前が日記を書け。わかったな」
 理不尽な強制に、我輩は足を突っぱねて抵抗した。
 だいたい、ご主人様が多忙で日記を書く暇がないなど、大嘘だ。たんに面倒なだけなのだ。ぐうたらなだけなのだ。
 そんなご主人様の怠慢を、なぜ我輩がカバーしなくてはならないなのだ。すると、やつはこう言った。
「毎日、ドッグフードをやっているのは誰だ? お前の好きな『ゴン太のササミジャーキー』を日に七枚もやっているじゃないか。お前が書かないというのなら、残念だが、ゴン太くんはお預けだ」
 態のいい脅しだった。
 我輩はササミジャーキーが死ぬほど好きだ。あのカチカチに乾燥したササミをがりがりと噛み砕くときには、正直エクスタシーを感じる。
 今こうして我輩がブログを書いていることから、みなさんもわかっただろう。そう、小生は「ゴン太」の魅力に負けたのである。
 それから一ヵ月、我輩はやつの書いた駄文を写すことを強制された。
「日本語は難しいぞ。同じ意味の言葉でも、何通りも言い方がある。お前はいやしくも作家の愛犬なのだから、それなりの文章を書け。そのためには、厳しい文章修業が必要だ」
 果して、やつの駄文を写すことが修業になったのかどうかは大いに疑わしいところだが、我輩は血がにじむような一ヵ月の特訓を経て、なんとか日本語を操れるようになった。
 ここまで書いたところで、ご主人様が「どれどれ」と後ろからモニターを覗き込んできた。ざっと読んで、
「バカ! なにを考えてるんだ。長すぎる! 文章が冗漫だし、自分のことばかり書いてるじゃないか。読者様のことも考えろ。忙しいんだよ、みんな! ここでやめて、次回にまわせ」
 相変わらず勝手なことをほざいた。
「次回は、おれのことをちゃんと書けよ。いいな」
 そう言い残して、去っていった。
 我輩はキーボードの打ちすぎでタコができた肉球を、ぺろりと舐めた。
 本来なら柔らかい肉球が、かたくなっていた。


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